2008年07月08日


 祇園祭りの頃。

 あの日を思い出す。

 なじみの料理屋に入った男は

  冷酒と鱧

 を女将に頼んだ後、こちらを見て

  「お前、食べられる?」

 と聞いた。

 まだ若い私は、それが何だが判らなかったが子供扱いされるのか嫌で

  「大丈夫」

 と背伸びした。

 鱧があんなに長い魚で、骨切の手間のかかるものだと知ったのは何度か食するようになってから。

 男はからし酢味噌ではなく、梅肉を好んだ。
 訳のわからない私は同じように食するしかなく、淡白な身に酸っぱさだけが記憶に残った。

 今でも鱧は、好きでも嫌いでもない。

 けれども、

 梅肉の酸っぱさは、初恋の酸っぱさを思い出す。

 白い身に乗せられた梅肉の紅さは、あの時捧げた乙女の鮮血を思い出す。

 夏の暑さよりも、熱く身を焦がした恋の始まり。



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haruhara1 at 22:33 │Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!【恋愛】 春原日記 

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