2008年11月14日

蕾 第百三話


 ディスプレイに表示させたのは

  「るり子さん」

 プップップップッ
 相手の電話へ電波を送る音がする。

 昨日はじめ会って、また今日なんて。
 そう思うと、切ろうかと思った。
 しかし、
 私がボタンを押すより早く

  「はい、るり子です」

 昨日の夜とは比べ物にならない上品な声。

 るり子は苗字を名のならない。

  「愛人に苗字なんてないのよ」
  「気持ちはあの人に嫁いでいるけど、籍は入っていないから苗字は無いの」

 そう言って、私の携帯に自分の番号を登録した。

 あの大きな門には、木の表札がかかっていた気がする。
 でも、
 それを読んで「●●さんでしょ」と言うのは無粋な気がする。
 私はこれからもずっと、この人を「るり子さん」とだけ呼ぶのだろう。

 私が余計なことを考えていると

  「来ます?」

 と問いかけられた。
 他に何も聞く事も話すこともなく

  「あの人が居るから、来るのなら5時過ぎがいいわ」
  「車を迎えに行かせます」

 テキパキと決められてしまった。

 昨日は病院に送ってもらったので、改めて住所を伝えた。
 またあの運転手が来るのかと思うと気が重かったが、電車を乗り継いでるり子の家に足を運ぶ気にもなれなかった。

 電話を切った私の頭に、達彦の言葉がリプレイされる。
 
  「真っ赤に充血して腫れてる」

 昨日の私のクリトリスを知っているるり子は、昨日より紅く腫れたクリトリスを見てどう言うだろう。

  「誰と愛し合ったの?」
  「どうされたらこんなに紅く腫れるの?」
  「きつく吸われるのが好きなの?」

 この身体を、るり子がどう責めてくれるかと思うと興奮した
 男に吸われたと言っても、愛人をしているるり子は軽蔑しないだろう。

 私はさっきまでの涙が嘘のように、わくわくしてシャワーを浴びに浴室へ向かった。

 〜つづく



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haruhara1 at 23:12│Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!【小説】 宵待譚 

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